ドクターと1つのチームに
なって
命をつなげる、
モノづくり。

THE SPECIALIST

DevelopmentTAKAHIRO HATTORI
生産本部 技術部 設計開発課|服部 貴裕
大学では物質化学工学を専攻。粉末同士を合成して、全く別の物資に変化するという化学のおもしろさに惹かれ、有機合成という分野のゼミに所属。培った樹脂系の知識を活かしたモノづくりの仕事を探す中で、地元に拠点のあった富士システムズに入社。

量産品だと思っていたカテーテルは、
一本ずつ緻密に組み上げられたものだった。

学生時代は化学工学を学び、モノづくりでそれを活かす仕事がしたいと思っていました。特に医療関係には安定しているイメージがあり、就職活動では製薬や製造などを中心に探していたところ、地元の福島に富士システムズが拠点を置いていることを知り、早速工場見学を申し込むことに。機械で大量に生産されているところを想像していたのですが、主力商品であるカテーテルを、一つひとつ丁寧に手で組み上げていました。
「人の身体に入れるものだし、とても精密な製品だから、最後は人の手で造り上げるんです」。
そんな説明を聞いて、一気に惹きつけられている自分がいました。ここなら、モノづくりのやりがいや手応えをダイレクトに感じられると思ったんです。入社後はすぐに、製造部門へ配属に。そこで主にカテーテルの製造を担当していました。ひとことにカテーテルと言っても、先にバルーンがついているもの、チューブの構造が2層3層になっているもの、他の機器に接続する部品がついているものと、仕様はさまざまです。チューブ同士を接続したり、コネクタとチューブを接続する際は、緻密さが求められるため、手作業で行われます。私はそこまで器用ではありませんでしたが、いくつも製品を仕上げていくうちに自信がついてきました。

これまで救えなかった命を救うため、
自分たちが貢献しているという実感。

入社2年目からは、現在所属する開発部へ。異動してまもなく経験したのが、水頭症を治療するカテーテルのプロジェクトでした。水頭症とは、脳内に水分が溜まりすぎて脳を圧迫してしまう病です。手術は、患者の負担が少ない内視鏡手術が主流。私たちが作るカテーテルは、その内視鏡の中を通り、先端についたバルーンを膨らませることで、脳内の水分を循環させるという重要な役割を果たします。当時の私たちのミッションは、以前のモデルよりもカテーテルの外径を細くすること。新たな内視鏡の開発に合わせ、カテーテルの進化が求められていたのです。しかし、ただ細くするだけでは“コシ”がなくなり、内視鏡の中をスムーズに通ることができません。この開発では、外径を細くしながら、いかに“コシ”のあるものに仕上げるかがポイントでした。
 はじめは、全く別の素材を検討したものの、それでは申請から承認までに時間がかかり、予算も膨大になるため却下。その後はチューブを肉厚にして内径を小さくしてみましたが、先端のバルーンを膨らませるときの抵抗が大きく、こちらも却下に。最終的には、もともと使用していたナイロンの硬度をアップさせ、内腔にステンレスを入れ、理想の”コシ”を実現しました。試作品を作っては病院へ足を運び、先生に感触を確かめてもらいました。改良に改良を重ねて、ようやく製品化できたときホッとしました。それまで世の中になかったカテーテルを作り上げ、1人でも多くの患者さんを救うお手伝いができたという、感じたことのない充実感を味わうことができました。

医療のニーズに自らの手で応える、
ここにしかない技術とやりがい。

開発というと「1人で黙々と」というイメージがあるかもしれませんが、実は、自社の営業やドクターとの意見交換が欠かせません。その大切さを感じたきっかけは、脳血管手術用のカテーテルの開発でした。営業がドクターから要望を伺ってはじまったこのプロジェクト。外径3mmのカテーテルの太さはそのままに、強度や硬度を保ちながら、チューブの内側を削って内腔をひろげることがミッションでした。試作品をお作りして直接ドクターに意見を伺うのですが、手術へのこだわりや治療に対する熱意を感じ、やりとりを繰り返す中で形にするべきものが見えてきたのです。こちらからも、より汎用的に使えるよう工夫を提案したり、改善した部分を説明したりと、1つのチームとなって作りあげることができました。最終的には、素材や形の工夫に加えて、補強のために編み込んだ金属を内蔵。着手から4年をかけて、ようやく発売することが出来ました。
 この仕事を通して、開発とは、製品を改良してより多くの患者さんを助けるお仕事だと改めて認識しました。どうしたら病を克服できるのかという命題に向き合い、素材を変えたり、組み上げ方を工夫したり、試行錯誤を繰り返していく。一つの製品を作り上げていく工程は、困難の連続ですが、だからこそ、そんな開発を積み重ねてきた「富士システムズ」には、他社にはまねできない技術があり、ここでしか作れない製品をいくつもうみだすことができているのだと思います。そして、一つの製品開発をやりとげるたびに、その「原動力」となっている実感は、私にとって大きなやりがいになっています。

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